Abstract : |
肺動脈原発腫瘍は極めてまれな疾患であるが, 今回, 術前肺動脈撮影より肺動脈原発腫瘍と診断し, 人工心肺下に主肺動脈内の腫瘍の摘出と右肺剔除術を行い, 切除しえた例を経験した. 症例は, 27歳, 女性. 背部痛と発熱を主訴に来院, 胸部CTにて, 主肺動脈から右肺動脈末梢にかけて内腔が造影されず, 肺動脈造影でも主肺動脈に腫瘤状の陰影欠損を認め, 肺動脈腫瘍の診断で手術となった. 手術は, 胸骨正中切開人工心肺下に, 主肺動脈を切開し軟らかい多房性の腫瘍を摘出した. 右肺動脈より末梢の腫瘍は, 右第4肋間開胸を追加し右肺全剔術を行い摘出した. 病理組織学的には, 紡錘形の細胞が花むしろ状に配列し, 免疫組織化学でα1-antitrypsin染色が陽性で, malignant fibrous histiocytoma(MFH)と診断された. 本症例は, 術後6ヵ月に副腎転移が出現し, 術後10ヵ月で死亡した. 肺動脈に原発する腫瘍は極めてまれな疾患であり肺動脈塞栓症との鑑別が問題となる. 今回, 術前肺動脈撮影より肺動脈原発腫瘍と診断し, 人工心肺を用いて主肺動脈内の腫瘍の摘出と右肺剔除術を行い, 切除しえた例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. |