Abstract : |
近年開心術において, 冷却血液併用心筋保護法が多く用いられ, 晶質心筋保護液より優れているとされている. しかし血液併用心筋保護法は, 白血球や血小板が含まれ心停止時や再灌流時に組織障害をもたらすと報告されている. 著者らは, 血液併用心筋保護施行中の白血球や血小板の心筋障害について検討し, 併せてその予防の目的で好中球除去フィルターを用いその有効性について検討をした. 成人冠動脈バイパス手術14例を対象とし, 好中球除去フィルターを組み込んだ心筋保護回路を使用したF群と, 好中球除去フィルターを用いない対象群をN群として検討した. 冠静脈血を大動脈遮断前から遮断解除後にかけて採取し, 白血球による障害の指標としてエラスターゼを, 血小板による障害の指標としてthromboxane B2及び6-keto-prostaglandin F1αを, 組織障害の指標として過酸化脂質を測定した. また術後のCK及びCK-MB(peak値)なども測定し比較検討をした. F群において遮断解除後はエラスターゼは有意に低値を示し(p<0.01), 過酸化脂質もF群において, 遮断解除15分後に有意に低値を示した(p<0.05). しかしTXB2, 6-keto-PGF1αは, 両群間に差を認めなかった. 術後CK-MB値もF群が有意に低下傾向にあり(p<0.01), F群において心筋障害が軽度であったことを示唆した. 好中球除去フィルターを血液併用心筋保護に応用すれば, 心停止下心筋虚血中の組織障害を減少させ, 併せて再灌流障害もある程度予防することが可能であると考えられた. |