アブストラクト(42巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部下行大動脈瘤手術の補助手段の臨床的検討
Subtitle :
Authors : 今川弘*, 安達盛次*, 金子充範*, 大谷正勝**, 高野弘志*, 加藤雅明*, 植田隆司*, 白鴻志*, 吉岡泰彦*, 大西健二**
Authors(kana) :
Organization : *大阪府立病院心臓血管外科, **桜橋渡辺病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 42
Number : 4
Page : 537-544
Year/Month : 1994 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部下行大動脈瘤(DS-TAA)52例を, その補助手段により単純遮断(SC)群(n=42)並びに遠心ポンプを用いた左心バイパス(LHB)群(n=10)の2群に分け, 臨床的検討を行った. SC群には手術死を認めず, 病院死を2例(5%)に認めた. LHB群においては手術死1例(10%), 病院死1例(10%)を認めた. 合併症は呼吸不全の頻度が最も多く, 次いで腎不全を多く認め, 心合併症はLHB群の1例に認めた. 対麻痺の発生を認めなかった. 両群とも, 術後に, Alanine aminotransferase, クレアチニン(CRN), アミラーゼ(AMY)の一過性の上昇を認めたが, 術後1ヵ月の時点では術前値と差が無く, 更に各時点において, SC群, LHB群の両群間に差を認めなかった. 術前腎機能正常例においては, SC群では総大動脈遮断時間と術後1カ月以内のCRNの最大値(Max CRN)の間に正の対数相関関係を認めたが, LHB群においては60分以上の大動脈遮断例においても, Max CRNは3.0mg/dl以下に維持された. 更に, SC群では総大動脈遮断時間と術後1ヵ月以内のAMYの最大値の間に正の直線相関関係を認めた. 遠隔成績に関しては, 動脈瘤関連死亡を認めず, 術後4年の生存率はSC群83%, LHB群68%であった. 以上より, 30分以内の大動脈遮断により手術が可能で, 遮断末梢側の臓器機能の保たれたDS-TAA症例においては, SCにより安全に且つ容易に手術を行うことが可能であると考えられた. 他方, 30分以上の遮断時間が予測される症例あるいは臓器機能の低下を認める症例においては, LHBを補助手段として用いることが望ましいと思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部大動脈瘤, 補助手段, 単純遮断, 左心バイパス, 遠心ポンプ
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