アブストラクト(42巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 甲状腺機能低下バセドウ病における冠状動脈バイパス術の1症例
Subtitle : 症例
Authors : 市川誠一, 須磨幸蔵, 城間賢二, 金子秀実, 今西薫
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学付属第二病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 42
Number : 4
Page : 568-573
Year/Month : 1994 / 4
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 症例は55歳, 男性. 45歳時, バセドウ病を指摘され以後内服加療, 今回狭心症に対する冠状動脈バイパス術施行目的で当科入院となった. 術前, 甲状腺機能は低下状態にコントロールされていたが抗甲状腺剤の増減は行わなかった. 術中術後の甲状腺機能につき観察を加えた. 甲状腺ホルモンは体外循環中著明な低値を示した. T3, fT3, T4, fT4は体外循環終了後一時術前値に復したが術後3日目まで低下傾向を示した. rT3は体外循環終了後上昇した. 患者の血行動態は安定しており良好な経過をたどることができた. バセドウ病を伴う狭心症に対する冠状動脈バイパス術の報告はまれであり, 治療方針策定に当たっては幾つかの困難が存在するものと考えられた. その管理上の問題点を中心に文献的考察を加えて報告した. 血行動態に対して持つその大きな影響力にもかかわらず, 体外循環の甲状腺ホルモン代謝動態への影響についての報告1)~5)は限られており, いまだ一定の見解が得られていないのが現状である. 更に甲状腺機能亢進症を伴った心疾患に対する開心術の報告6)~13)も少ないが, その中では術前の甲状腺機能のコントロール, 体外循環の際のクリーゼなどが問題となるとされる. 今回われわれは抗甲状腺剤により甲状腺機能低下状態にあるバセドウ病患者に対し冠状動脈バイパス術を施行するという内分泌学的にも興味ある症例を経験し, 経時的な甲状腺機能につき比較的多項目にわたり検討を加える事ができた. 文献的にその管理上の特殊性を中心に考察する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : バセドウ病, 狭心症, 冠状動脈バイパス術, 甲状腺機能, 体外循環
このページの一番上へ