Abstract : |
症例は75歳, 女性. 左主幹部及び右冠状動脈病変に対して, 過去に2度の胸骨正中切開による冠状動脈バイパス術(CABG)を受けている. 左前下行枝(LAD)領域の虚血に対し, 今回3度目のCABGを左開胸・非体外循環下に行った. 大伏在静脈を採取し右大腿動静脈を確保後, 左第5肋間で開胸した. 下行大動脈に静脈グラフトを端側吻合後, LADへの吻合部直上の旧静脈グラフトに新グラフトを端側吻合した. LADへの血流遮断時間は7分で, この間の循環動態の変動や心電図変化は認めなかった. 従って体外循環のためのカニュレーションも必要とせず, 手術は3時間55分で終了した. 経過は順調で術後の冠状動脈造影でグラフトの開存が確認された. 左開胸アプローチによる冠状動脈再手術は胸骨正中切開に比べ, 心筋や開存グラフト損傷の危険が少なく有利である. 更に体外循環を用いずに吻合を行うことにより, 手術侵襲を最小限に抑えることができ良好な結果をえた. 冠状動脈バイパス術(CABG)の症例を重ねるにつれ, 近年, 再手術症例も増加しつつある. 今回われわれは, 3回目のCABGを左開胸下に体外循環を使用せずに行い, 良好に経過した1例を経験したので, ここに報告する. |