Abstract : |
筋小胞体カルシウムチャネルに特異的に結合し筋力胞体からのカルシウム放出を促進するリアノジンを用いて, 虚血前の筋小胞体カルシウム含量の低下が心筋保護液の効果を増強させるか否かを摘出灌流心モデルで検討した. 方法:Wistar ratの心臓をmodified KHBB液で20分間, working灌流し, リアノジン投与前の心機能(大動脈流量, 冠灌流量, 心拍数)を測定した. 次にリアノジン添加modified KHBB液で15分間のLangendorff灌流を行った後, 再びmodified KHBB液(リアノジン非添加)で20分間のworking灌流を行い, リアノジン投与後の心機能を測定した. St Thomas液で心停止を得た後, 38分間の虚血(37℃)と15分間のLangendorff再灌流を行った. 次の20分間のworking再灌流中に虚血後心機能を測定した. 結果:前処理のリアノジン濃度が0, 1.75, 7.00nmol/Lのとき, リアノジン投与前に対する投与後の大動脈流量の変化は, それぞれ92.3±2.0, 87.3±1.9, 73.1±1.7*%(*p<0.05)であった. 虚血前(リアノジン投与前)に対する虚血後の大動脈流量回復率はそれぞれ39.1±3.3, 32.8±5.3, 37.3±4.4%(NS)であった. 再灌流15分間のcreatine kinase漏出量は79.9±12.3, 86.4±23.5, 83.5±17.5IU/g dry wt(NS)であった. 結論:(i)7.00nmol/Lのリアノジン前処理群は対照群に比し, 処理後, 大動脈流量を有意に低下させ, 筋小胞体カルシウム含量の低下が示唆された. (ii)7.00nmol/Lのリアノジン前処理群は, 対照群に比し虚血後の大動脈流量回復率と逸脱酵素漏出量を変化させなかった. 従って, 筋小胞体カルシウム含量の低下と心筋保護増強効果の関連性は少ないと思われた. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:845-851) |