Abstract : |
in-situ動脈グラフトを用いたSequential Coronary Artery Bypass Grafting(Seq-CABG)41例について早期及び遠隔成績を検討した. 動脈グラフトによるSeq-CABGの内訳は左内胸動脈(LITA)による対角枝-左前下行枝(Diagonal-LAD)へのSeq-CABGが29例(ITA-Seq), LAD segment 7-segment 8(AHA分類)へのSkip bypassが5例(ITA-Skip), 右胃大網動脈(RGEA)による右冠動脈(RCA), 左回旋枝(CX)へのSeq-CABGが7例(GEA-Seq)であった. 病院死亡は無かったが, 遠隔期心臓死をITA-Skipの1例に認めた. 早期グラフト開存率は側々及び端側吻合を合わせて95%(77/81)であった. 術後グラフト造影にてグラフト狭窄はITA-Seqの1例に, 閉塞はITA-Seqの2例, ITA-Skipの1例, GEA-Seqの1例に認めた. 再手術はITA-Seqの3例に施行されたが, 術後PTCAはなかった. 心臓死, 早期狭窄・閉塞及び再手術の計9例のグラフト造影においてSeq-CABGの端側吻合部での狭窄・閉塞が7例にみられた. 側々吻合部の狭窄・閉塞がみられたのは2例のみであった. ITA-SeqのDiagonalの開存率は100%であり, また房室結節枝(4AV), 後下行枝(4PD), 後側壁枝(PL)などの細小な血管に対して施行されたGEA-Seqの開存率は92.3%と良好であった. 動脈グラフトによるSeq-CABGは2次血管や細小な血管に対しての動脈グラフトの適応を拡大できるバイパス法である. しかし一方でグラフト狭窄・閉塞が, 端側吻合部に多くみられるという問題点があり, この原因の多くに動脈グラフトの太さの関与が考えられる. 動脈グラフトによるSeq-CABGの適応としてはITA-Seqでは1.8mm, ITA-Skipでは1.5mm, GEA-Seqでは2.0mm以上の内径が必要であると考える. それより細い場合は無理にSeq-CABGを行わず, individual吻合を選択すべきである. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:890-895) |