Abstract : |
1977年より1992年までに虚血性弁膜症16例について外科治療を施行した. 病理所見により乳頭筋機能不全症候群(PMD)12例, 乳頭筋断裂群(PR)4例の2群に分類し, 外科治療成績について検討を加えた. 術前冠状動脈病変数は, PMD群2.4±0.84に対し, PR群1.25とPMD群に高く, 手術時平均年齢はPMD群59.3±7.4歳に対し, 74.3±7.8歳とPR群に高齢であった. 僧帽弁逆流病変の局在はいずれの群においても後交連部が主病変であり, PMD群では, 12例中10例(83%)に弁形成術を施行し, PR群では全例弁置換術を施行した. 冠動脈バイパス術の同時施行率は, PMD群では100%で平均バイパス本数は1.8本であった. これに対し, PR群では1例(25%)に冠状動脈バイパスを併用したのにとどまった. 術後グラフト開存率は静脈グラフト88.3%, 動脈グラフト88.9%と良好であった. 手術死亡はなく, 手術遠隔期生存率は累積6年生存率53%であった. 遠隔期死亡はPMD群で心室性不整脈死1例, 突然死2例を認め, PR群では, 術前からの腎不全から多臓器障害を合併した病院死1例を認めた. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1038-1042) |