Abstract : |
当科では1987年4月より, 自己血保存を取り入れることにより, 同種血輸血量を削減する努力をしている. 本稿では1987年4月より1992年12月までに自己血保存を行った442例について無同種血輸血手術の成否の決定因子を多変量解析を用いて検討した. 343例(77.6%, Group 1)では同種血輸血を必要とせず, 99例(22.4%, Group 2)では自己血輸血に加えて同種血輸血を必要とした. 術前因子では, 年齢, 体重, 採血回数, 自己血の保存量, 体外循環前のHb, Htについて2Group間に有意差を認めた. 手術因子の中では大動脈遮断時間, 体外循環時間, 使用した自己血量, 術後12時間のドレン出血量並びに総ドレン出血量, 再開胸止血術の件数について2Group間に有意差を認めた. 多変量解析を用いた結果では, 総ドレン出血量が最も寄与率の高い因子であり, 以下体外循環前のHb, 体重, 体外循環回路内希釈血液の濃縮量, 自己血の保存量の順に寄与率が高かった. これらの因子を把握することにより, 無同種血輸血症例をさらに増やすことが可能である. 本稿は, 開心術における自己保存血使用の, 本邦における最多症例数であると思われる. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1123-1131) |