Abstract : |
小児開心術症例16例を対象とし, 体外循環中の尿細管障害及びハプトグロビン(Hp)前投与の有用性につき検討した. 人工心肺充填液中にハプトグロビン100単位/kg付加した群(Hp(+)群)7例, 付加しなかった群(Hp(-)群)9例の2群に分類した. 年齢, 体重, 体外循環時間は両群間で有意差を認めなかった. 体外循環中の血清遊離ヘモグロビン(Free-Hb)及び尿細管機能の指標としてα1-microglobulin(α1m), β2-microglobulin(β2m), N-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)を測定し, それぞれ指数値(尿中値/尿中Cr)と排泄分画(Fc-α1m, Fc-β2m)につき両群間で比較検討した. その結果, Free-Hb, 尿細管機能の各指標とも体外循環終了時にピーク値となり, max Free-HbはHp(+)群5.8±4.3mg/dl, Hp(-)群21.6±16.3mg/dlとHp(+)群で有意に(p<0.05)低値を示した. また尿細管機能ではHp(+)群でU-α1m・I, U-NAG・I, Fc-α1mの最大値(max)がいずれもHp(-)群に比して有意に(p<0.05)低値を示し, max・U-β2m・I, max・Fc-β2mも有意差はないもののHp(+)群で低い傾向を示した. 以上よりハプトグロビン前投与は主として体外循環中Free-Hbの増加を抑制することで尿細管障害を防止し, その機能を良好に維持できる可能性が示唆された. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1137-1141) |