Abstract : |
高齢者の先天性三尖弁閉鎖不全症を経験した. 症例は70歳, 女性. 25歳の頃より心疾患を指摘されていたが放置していた. 近医にて利尿剤投与を受けていたが, 進行する右心不全症状を主訴に来院した. 心超音波検査や心臓カテーテル検査により著明な右房の拡大(約8cm)と高度三尖弁逆流を認めた. 弁輪の位置は正常で下方偏位を伴っていないことからEbstein病を否定し, また他の弁膜症の合併はないため孤立性三尖弁閉鎖不全症と診断した. 平成3年10月21日Carpentier-Edwards牛心膜弁による三尖弁置換術を行った. 三尖弁前尖は弁下組織と共に一塊となって右室壁に付着, 癒合し異形性をきたしており先天性異常と判明した. 術後2年後の現在元気に外来通院している. 先天性三尖弁閉鎖不全症は極めてまれな疾患であり本症例はわれわれの調べえた範囲で最高齢の手術治験例と思われたので報告する. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1226-1230)三尖弁閉鎖不全症(以下TR)はそのほとんどが他の弁膜症の合併による右室負荷のため二次的, 機能的に三尖弁逆流を生じたものであり, 三尖弁自体の形成異常に基づく先天性孤立性三尖弁閉鎖不全症(Congenital tricuspid insufficiency, 以下CTI)は非常にまれである1)2). |