Abstract : |
症例1:63歳, 男性. 交通外傷にてショック, 昏睡状態で搬入. 来院後短時間内に心呼吸停止となり心肺蘇生法に反応せず死亡. 胸部X-P・CTにて緊張性心嚢気腫を認めた. 症例2:18歳, 男性. 交通外傷で搬入され来院時胸部X-P・CTで心嚢気腫を認めた. 検査直後に心タンポナーデをきたしたが, 剣状突起下心嚢切開・ドレナージを行い, 次いで気管内挿管, 呼吸補助を施行し救命し得た. 鈍的胸部外傷後の心嚢気腫は気管・気管支, 肺, 食道損傷後にみられ, 緊張性心嚢気腫すなわち心タンポナーデを招来することがある. 胸部外傷後の陽圧人工呼吸施行例に緊張性心嚢気腫が発生する報告は多く, 心嚢気腫を認め更に陽圧呼吸を要する場合は予防的な持続心嚢ドレナージを考慮すべきである. また本症例のように自発呼吸下においても心タンポナーデを来す場合もあり, 慎重な観察と迅速な処置が要求される. 日本胸部外科学会雑誌1994;42:1242-1246) 心嚢気腫は鈍的胸部外傷後にしばしばみられる病態であるが, 心タンポナーデを呈し急速に病態の悪化を招く緊張性心嚢気腫の報告は極めて少ない. |