Abstract : |
1991年8月から1993年2月までに6例の急性解離性大動脈瘤Stanford type Aに対し, 解離腔の断端形成にゼラチン糊(GRF)を用いて手術を行った. 男性5例, 女性1例で, 年齢は51歳から64歳で, 平均年齢は57.3歳であった. 内膜亀裂部位は上行大動脈が4例, 弓部大動脈大彎側1例, 弓部大動脈小彎側1例であった. 術中補助循環は選択的脳灌流3例, 単純体外循環2例, 逆行性脳灌流1例であった. いずれの症例にも大動脈解離腔閉鎖にGRFを使用した. 症例1は上行大動脈をリング付人工血管で症例2は上行大動脈を人工血管で, 症例3は解離腔をパッチ閉鎖しprimaryに動脈壁を閉鎖し, SVGによる冠状動脈バイパスを付け加えた. 症例4は内膜亀裂部位をprimaryに閉鎖し, 症例5は上行大動脈から弓部大動脈にかけ人工血管で置換し, 症例6は上行大動脈より弓部小彎側を人工血管に置換した. 症例5は術中死したが, 他の5例は元気に外来通院している. GRFは解離腔の接着閉鎖のみならず, 急性期の脆弱な動脈壁を適度に硬くし, 補強効果もあり急性期の解離性大動脈瘤の断端処理に非常に有効である. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1276-1281) |