アブストラクト(42巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 完全大血管転位症I型に対するJatene手術後の遠隔期左心室機能特性-新生児期一期的手術と二期的手術の比較-
Subtitle :
Authors : 新岡俊治, 今井康晴, 澤渡和男, 星野修一, 青木満, 小出昌秋, 磯松幸尚, 長嶋光樹
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器小児外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 42
Number : 9
Page : 1289-1295
Year/Month : 1994 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心室中隔欠損症のない大血管転位症I型を手術時期の違いによって, すなわち新生児期一期的手術例と乳児期以降二期的手術例で遠隔期の左心室機能特性に差が認められるか否かに着目して検討を行った. 対象はJatene術後1年以上経過した症例のうち遠隔期カテーテル検査を施行した新生児期一期的手術例22例(I群)と二期的手術例37例(II群)を対象とし, 更にII群を遠隔期造影上I度以上の大動脈弁逆流(AR)の有無によって, ARのない22例をIIa群, ARのある15例をIIb群に分類した. 術前及び遠隔期検査より両心室容量(EDV), 両心室駆出率(EF), 左室心筋重量(LVM), LVM/LVEDV比(Mass/Volume ratio), 等容収縮末期左室壁応力(LVWS)を検討した. 遠隔期左心室容量は大動脈弁逆流のないIIa群においてもI群より有意に大きく, また大動脈弁逆流のある群ではその差が更に顕著であった(I=123±19, IIa=146±38, b:183±53%normal). I群のみ術前値に比して心室容量は減少, 正常化傾向を認めた. 左心室駆出率は遠隔期ではI群が最もよくIIb群との間には有意差を認めた(I:67±5, IIa:62±11, IIb:58±8%). 左室心筋重量は術前I群で有意に大きく, 遠隔期においては大動脈弁逆流のない群では正常化の兆しが見られるが大動脈弁逆流の存在する群では心室容量拡大を反映してMassも増加していた(I:85±11, IIa:113±14, IIb:130±9%normal). 新生児群では術前70%normalと有意に少なく遠隔期においても85%normalと小さいが順調に増加正常化しつつある. Mass/Volume比は術前新生児群で有意に小さく左心室予備能としては二期的群が優れていると言えるが, 遠隔期には両群間に差は認めなかった. 以上より, 新生児期一期的手術は遠隔期大動脈弁逆流の頻度, 遠隔期左心室機能特性から見て二期的手術より優れていると考える. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1289-1295)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大血管転位症I型, 動脈スイッチ手術, 遠隔期左心室機能特性, 左心室心筋重量, Mass/Volume比
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