アブストラクト(42巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Transcranial Dopplerを用いた逆行性脳灌流中の脳血流測定
Subtitle :
Authors : 板橋弘之, 橋本明政, 青見茂之, 徳永裕之, 小柳俊哉, 今牧瑞浦, 田鎖治, 平井雅也, 佐藤志樹, 小柳仁
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 42
Number : 10
Page : 1851-1857
Year/Month : 1994 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 弓部大動脈再建時の補助手段としての超低体温を併用した逆行性脳灌流法(以下CRCP)施行例における中大脳動脈(以下MCA)の血流を, Transcranial Doppler(以下TCD)を用いて臨床的にはじめて測定した. 更にTCDによるMCA血流はCRCPの中の脳血流を反映すると考え, TCDを用いてCRCPの脳保護効果について検討した. 対象は, 年齢23歳~72歳(平均55歳), 男性5例, 女性1例. 手術術式は分枝付きグラフトを用いた全弓部置換術3例, 遠位弓部大動脈置換術2例, Bentall手術Piehler変法+近位弓部置換術1例であった. 127分, 131分と長時間のCRCPを行った2例に術後一過性意識障害を認め, そのうち1例は術後14日目に上行大動脈解離を起こし死亡した. 他は脳神経障害を認めなかった. CRCPは通常体外循環で膀胱温18℃まで冷却後, 原則として上大静脈圧(以下SVCP)30cmH2Oで上大静脈(以下SVC)送血を行った. 手術中は, 側頭部に固定したTCDを用いてMCA血流を持続モニターし, 時間ごとの血液ガス分析, 平均MCA血流速度(以下MMCAV), SVC送血量, SVCP, 咽頭温, ヘマクリット値(以下Hct)を記録した. 6例中3例ではTCDでMCAでのCRCP中の逆行性血流を認めることができたが, 1例は時間とともに脳血流が減少し, 脳浮腫の進行を示唆する所見が得られた. 他の3例では逆行性血流を認められなかった. また, 前者において逆行性血流を認め得たCRCP中のMCAの血流速度(以下MCAV)は体外循環前の11~60(平均37±15)%であった. 6例中5例に循環再開後に反応性充血を認め, 脳虚血が示唆された. CRCPは循環停止時間を延長しうる有効な補助手段であるが, CRCP中の脳灌流には個人差があり灌流時間の延長と共に脳虚血が進行する場合もあるため, 可能な限り短時間の使用が望ましい. また個々の症例におけるCRCPの安全性を高めるためTCDは有効なモニターであると思われた. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1851-1857)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 弓部大動脈瘤, 逆行性脳灌流法, 脳保護, 脳血流, Transcranial Doppler
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