Abstract : |
胸腺癌は胸腺上皮細胞由来の比較的まれな悪性腫瘍であるが, 近年その報告が増えている. 最近5年間にわれわれが経験した8例は, 男性5例, 女性3例で平均62歳, 組織学的には扁平上皮癌3例, 腺癌1例, 未分化癌4例であった. 自覚症状にて発見されたものが8例中6例. 重症筋無力症などの合併症はいずれも認めなかった. 胸部単純X線にて横隔挙上を認めたものが3例, 胸部CTにて縦隔のリンパ節腫大を認めたものが6例と高率であった. 全例1期的に手術を施行したが, 完全摘出し得たのは2例で, 原発巣のみの切除が2例(2例は播種巣を遺残, 1例は胸壁浸潤部を遺残), 生検が3例であった. 開胸にてはじめて胸膜播種を確認したものが5例あった. 全例に術後放射線あるいは化学療法を施行した. 縦隔胸膜までの浸潤で完全摘出し得た扁平上皮癌の1例のみ術後5年再発, 転移なく生存中であるが, 他は全例術後4ヵ月から2年5ヵ月以内に腫瘍死し, 予後不良であった. 進行病期の手術適応についてはその組織型等も考慮し, 慎重を要すると思われる. パラフィン標本上での免疫組織染色ではEMA(epithelial membrane antigen)の陽性率が胸腺腫に比し高率であり, 腫瘍細胞の悪性度の指標となり得る可能性が示唆された. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:2060-2067) |