Abstract : |
共通房室弁逆流を合併した単心室, 両大血管右室起始症の10例に対して, 房室弁の弁・弁輪形成術を行った. 逆流房室弁の形態は四尖弁の共通房室弁が5例, 三尖弁型が3例, 僧帽弁型が2例であった. 共通房室弁ではKay法による4ヵ所弁輪縫縮を2例に, 共通前尖, 後尖の中央を縫合し二弁化する形成法とKay, 又はDeVega法を組み合わせた術式を3例に行った. 4ヵ所Kay法で1例を術後失い, 1例は中等度以上の逆流が残存した. 二弁化形成術の3例の房室弁逆流はともに軽度以下に改善した. 三尖弁型の3例では, 1例に2ヵ所のKay法を行い術後狭窄のため死亡し, 1例は弁尖縫合, 腱索, 乳頭筋縫縮とKay法による弁輪縫縮を行ったが, 術後遠隔期に弁逆流が中等度に再発した. 残りの1例はGore-tex tubeを用いて亜全周性に弁輪縫縮を行い, 逆流が軽度まで改善した. 僧帽弁型の2例は逸脱した弁尖の縫縮とKay法を行い, 弁逆流はどちらも軽度以下に改善した. 単心室などに伴う房室弁逆流の形成法は, 弁の形態に合わせて三尖弁型では亜全周性の弁輪縫縮術を, 四尖弁の共通房室弁では前・後尖の遊離縁縫合による二弁化形成そして僧帽弁型では逸脱した弁尖の局所的な縫合などの弁形成術を選択することが推奨される. こうした弁形成術を行っても残る逆流にはKay, 又はDeVega法による弁輪縫縮の追加が効果的である. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:2075-2080) |