Abstract : |
食道壁の広範な硬化像と嚥下障害を来した表層拡大型食道癌の1例を経験したので報告する. 症例は64歳, 男性. 嚥下障害を主訴として入院した. 食道造影では, Iu~Eiに広範な壁硬化像を認め, 内視鏡では16cmにわたる表面不整な陥凹性病変と門歯より33cmに約3cmの潰瘍浸潤型病変を認めたが, 通過障害を来すような狭窄はみられなかった. 病理学的検索では, 病変の大半は深達度ep~mmの広範な上皮内伸展で, 同部の粘膜固有層にはリンパ濾胞形成性の慢性炎症と粘膜筋板の著明な肥厚が認められ, これらが食道壁の硬化や機能不全を引き起こした可能性が推測された. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:2112-2116)全周性の食道狭窄あるいは壁硬化像は, 進行した食道癌や食道炎, 膠原病の合併などで報告されているが1)~6), 粘膜内にとどまる食道表在癌の報告はまれである. 今回われわれは, 病変の大部分がepあるいはmmにとどまる表在癌でありながら, 食道造影上Iu~Eiに至る16cmの広範な壁硬化像を呈し, 嚥下障害を主訴として入院した表層拡大型食道癌の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. |