Abstract : |
僧帽弁後尖を温存して僧帽弁置換術を行った14例と従来の弁尖を切除する方法で行った14例を対象に, 後尖温存術式の術後左心機能に及ぼす影響を検討した. 99mTcを用いた安静心プールスキャンを術前と術後1ヵ月に行い, 左室収縮・拡張機能を測定した. 収縮機能では, 非温存群において, 全駆出率は術前56±9%, 術後52±10%と術後低下する傾向が認められ, 前壁中隔の局所駆出率は術前28±10%, 術後32±10%であり, 心尖部は術前71±10%, 術後73±16%であったが, 後側壁は術前56±16%, 術後53±16%で低下傾向にあった. これに対し温存群では, 全駆出率は術前53±11%, 術後58±11%と改善傾向にあり, 前壁中隔の局所駆出率は術前37±13%, 術後43±19%であり, 心尖部は術前74±20%, 術後77±17%であり, 後側壁は術前53±11%, 術後68±16%であり, この後側壁の局所駆出率の改善が全駆出率の増加に反映されたと考えられた. 拡張機能では, 能動的拡張機能の指標である拡張早期充満速度定数は後尖温存群では術前1.73±0.43, 術後1.05±0.61であり, 非温存群では術前1.59±0.24, 術後0.97±0.48で, 両群ともに術後正常値に復したが有意差はなかった. 後尖温存術式は左室後側壁の壁運動が保持され, 全駆出率に反映される左室収縮能に優れた術式であることが示された. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:147-152) |