Abstract : |
犬同種肺移植実験において肺胞洗浄液・末梢血液・移植肺及び脾臓内より採取された単核球によるドナー特異的細胞傷害活性と拒絶反応との関係について検討した. 対象は雑種成犬28頭で, 15頭には免疫抑制剤を投与せず, 13頭に対してはcyclosporine A20mg/kg/day10日間の経口投与を行った. ドナーより効果細胞として末梢血中リンパ球(PBL)・気管支肺胞洗浄液中リンパ球(BAL)・移植肺浸潤細胞(GIL)・脾細胞(SpL)を採取し, ドナー皮膚線維芽細胞を標的とした51Cr放出試験を行い, 各細胞傷害活性と移植肺病理組織所見とを比較した. E:T比=100:1において, early alveolar phaseではPBL6.04±4.92%, BAL19.83±14.92%, GIL10.23±11.50%であるのに対し, late alveolar phaseではPBL30.83±15.28%, BAL72.63±7.36%, GIL70.07±6.34%を示した. GIL・BALではearly alveolar phase以降で, PBL・SpLではlate alveolar phaseで細胞傷害活性の明らかな上昇が認められた. 特にBALでは拒絶反応の進行に伴ってその活性も上昇しており, またlate alveolar phaseではPBLに比較してBAL・GILにおいてより高値を示した. これらの成績から, 肺移植後の拒絶反応において重要な役割を演ずるドナー特異的細胞傷害性Tリンパ球は, 移植肺局所で活性化され, 局所から全身へと進展する可能性が示唆された. また肺炎の場合活性の上昇がみられず, 拒絶反応との鑑別が可能であったことから, 本法は急性拒絶反応におけるCTLの解析において極めて有用な方法であることが示された. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:174-180) |