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野地智, 北村昌也, 渋谷益宏, 上部一彦, 大塚吾郎, 青見茂之, 八田光弘, 遠藤真弘, 橋本明政, 小柳仁 |
| Abstract ： |
大動脈弁閉鎖不全症において術前心室性期外収縮の重症度から弁置換術後の遠隔期予後が予測できるかを検討した. 1980年から1992年までの間に当科で施行した単独大動脈弁閉鎖不全症に対する弁置換術217例のうち, 術前Holter心電図の結果が判明している107例を対象とし, これらをLown分類に基づいて分類した. また重症心室性期外収縮群（以下重症群）をLown分類3, 4A, 4Bとした. 術前心室性期外収縮を94.4％に認め, 1時間に30以上の心室性期外収縮を23.4％に認めた. 重症群の内訳はLown分類3, 4A, 4Bが各9.3％, 17.8％, 29.9％であり, 全体の57.0％であった. 術前心機能の指標について重症群と非重症群の2群間で比較検討した結果, 左室収縮末期容積係数（以下LVESVI：ml/m2）及び左室拡張末期容積係数（以下LVEDVI：ml/m2）は重症群で有意に高値を示した（153.1±76.4 vs 96.5±35.0 p＝0.0001, 257.0±85.4 vs 206.5±58.3 p＝0.0009）. 重症群間のLVESVIには有意差を認めなかったがLown分類0, 1, 2間のLVESVIには有意差を認めた（p＜0.05）. 術後遠隔期成績を検討すると重症群で1時間30以上の心室性期外収縮を認めた群は全体の19.6％であり, 遠隔期死亡6例はすべてこの群に認められた（28.6％）. 重症群の術後の実測生存率は5年83.5％, 10年72.7％と非重症群に比べ低かった（p＜0.01）. 大動脈弁閉鎖不全症における術前心室性期外収縮の重症度は左室機能低下に関連しており, 特に突然死を含む術後5年以降の遠隔期予後を予測する上で重要な因子と考えられた. （日本胸部外科学会雑誌1995；43：313－317） |
