アブストラクト(43巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 左室拡張機能に対するCABGの影響-ドプラー心エコー法による検討-
Subtitle :
Authors : 東田隆治
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学第二病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 43
Number : 3
Page : 318-324
Year/Month : 1995 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 左室拡張機能に及ぼす冠状動脈バイパス術(CABG)の効果をドプラー心エコー法を用いて, 左室流入血流パターンから検討した. 対象は, 1991年2月から1993年3月までに当科で施行したCABG症例のうち, 正常洞調律を欠くもの, 僧帽弁あるいは大動脈弁の弁疾患を有するもの, 術中心筋梗塞を合併したもの, 術前左室駆出率50%以下のもの, 心室瘤を形成しているものを除外した24例を冠状動脈疾患群(CAD群)とし, 狭心症の既往がなく, 心電図上虚血性変化を認めない17例を対象群(C群)とした. ドプラー心エコー法による左室拡張機能指標としてE/A:拡張早期流入血流速度と心房収縮による流入血流速度の最大血流速比, AHT:拡張早期流入血流速度が1/2最大流速から最大流速に達するまでの時間(msec), DHT:拡張早期流入血流速度が最大流速から1/2最大流速まで減速するのに要する時間(msec), AC:拡張早期流入血流速度の加速率(cm/sec2), DC:拡張早期流入血流速度の減速率(cm/sec2), IRT:等容性拡張時間(msec)をC群及びCAD群(術前及び術後3週目から4週目)で測定し比較検討した. C群と術前CAD群の比較では, 年齢, 平均血圧, 左室壁厚, 左房径, 左室駆出率にそれぞれ有意差は認めなかった. 拡張機能指標においては, 術前CAD群はC群に対し, E/A(0.72 vs 0.89)(数字は平均値を示す), AC(3.26 vs 4.07cm/sec2), DC(2.26 vs 2.98cm/sec2)が有意な低下を認め, IRT(115.9 vs 92.4msec)は有意な延長を示し, 冠状動脈疾患における拡張機能障害が観察された. 術前後の比較では, 心拍数の変化率が20%以内であった16例について比較検討した. E/Aは0.66から0.96に上昇, IRTは115.2msecから86.6msecに短縮, DHTは96.2msecから82.4msecに短縮, DCは2.04cm/sec2から3.22cm/sec2に増加し, 拡張機能の有意な改善を示した. また, AHT, ACも拡張機能の改善傾向を示した. これらのことから障害された拡張機能もCABGにより改善することが示唆された. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:318-324)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 左室拡張機能障害, 冠状動脈バイパス術, ドプラー心エコー
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