アブストラクト(43巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Terminal warm blood cardioplegiaの再灌流障害軽減効果に関する臨床的検討
Subtitle :
Authors : 樋上哲哉, 小川恭一, 麻田達郎, 向原伸彦, 大保英文
Authors(kana) :
Organization : 兵庫県立姫路循環器病センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 43
Number : 3
Page : 325-330
Year/Month : 1995 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Terminal warm blood cardioplegia(TWBC)の臨床効果を評価する目的で, 最近2年間の待期的開心術例のうちTWBCを併用した70例(I群)と非併用の70例(II群)を大動脈遮断解除後の心室細動(Vf)の発生及び心筋代謝の点から比較検討した. 全例cold blood cardiopligiaによる逆行性持続的冠灌流法(RC-CBCP法)を心筋保護法として用いた. 大動脈遮断解除後に自然心拍が出現せずにVfとなった例は, II群の48例(68.6%)に対し, I群では14例(19.7%)と有意に少なかった. 心筋代謝は大動脈遮断解除直後から24時間目までの乳酸, ピルビン酸値より過剰乳酸値(△XL)及び酸化還元電位較差(△Eh)の経時変化により判定した. △XL値は大動脈遮断解除後1, 2時間でI群で有意な低値を示し, I群における代謝の改善がより速やかであることが判明した. また, △Eh値の推移からも同様の結果を得た. 一方, TWBCの効果に関わる因子を究明するため各群のVf発生率及び△XLの術後最高値と諸因子について多変量解析を行ったところ, II群で再灌流血のCa++, Na+の高値, K+の低下がVf発生に最も関わることが示されたのに対し, I群ではTWBC投与後の左室心筋温の上昇度のみがVf発生に関与することが判明した. また, II群で大動脈遮断時間の延長, 再灌流時の低左室心筋温, 低直腸温, 及び再灌流血の高Ca++, 低K+が△XL上昇の要因であったのに対してI群ではこれらの因子の関与はなくなり, pH, BEのみが関係し, TWBC組成の酸性化が△XLの低減に関与することが示唆された. 以上より, TWBCは再灌流に先立つ細胞電解質バランスの是正と微小循環障害の改善などにより再灌流障害を低減すると考えられた. また, TWBCの効果には, その酸性組成と十分な心筋温上昇の得られる投与量が関与する可能性が示唆された. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:325-330)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : terminal warm blood cardioplegia, 逆行性冠灌流法, 再灌流障害, 心筋代謝, 心筋保護
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