アブストラクト(43巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高齢者弓部大動脈の動脈硬化の局在
Subtitle :
Authors : 山中一朗**, 三木成仁*, 楠原健嗣*, 上田裕一*, 大北裕*, 田畑隆文*
Authors(kana) :
Organization : *天理よろづ相談所病院心臓血管外科, **兵庫県立尼崎病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 43
Number : 4
Page : 432-437
Year/Month : 1995 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 高齢者の大動脈手術の増加に伴い, 弓部大動脈の高度に進行した動脈硬化は, 脳塞栓症との関連から問題となってきている. このため, われわれは, 高齢者の弓部大動脈の硬化病変の特徴, 局在について検討した. 対象及び方法:最近3年間の70歳以上の剖検例182例中大動脈に硬化病変を認めた50例に, 弓部大動脈を9区域に分割して, 各区域の動脈硬化の程度をGore-Tejada動脈硬化指数(ASCI)に準じて指数化した. また, 弓部三分枝の起始部から2cmの領域でも同様の方法で検討し, 対照として, 上行大動脈も同様に指数化した. 結果:(1)弓部大動脈のASCI(12.7)は, 上行大動脈(5.3)より有意に大きかった(p<0.05). (2)弓部大動脈の9区域の平均ASCIは, 弓部前壁遠位側, 左鎖骨下動脈の遠位側, 腕頭動脈周囲, 左鎖骨下動脈周囲の順に大きかった. (3)潰瘍性病変と石灰化病変の区域別頻度(%)を求めると, 潰瘍性病変は鎖骨下動脈周囲に, 石灰化病変は腕頭動脈周囲に最も多く認めた. (4)弓部3分枝のASCIは, 腕頭動脈が高値であったが, 50%以上の狭窄病変が存在する割合は, 左鎖骨下動脈が最も高率であった. 考察及び結論:弓部大動脈は上行大動脈と比べて動脈硬化が著しく, また, 弓部大動脈では, 腕頭動脈周囲, 左鎖骨下動脈周囲に動脈硬化が著明であった. 中でも潰瘍性病変は左鎖骨下動脈周囲に高頻度に認めた. このため, 弓部大動脈の手術操作においては, 腕頭動脈, 左鎖骨下動脈への送血管挿入やその周囲での遮断には注意が必要であり, 大動脈遮断やバルーン閉塞は極力避けるべきである. この観点から, 動脈硬化を基盤とする高齢者弓部大動脈瘤等では, 超低体温循環停止下にopen techniqueを用いた手術方法を採用することが望ましいと考える. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:432-437)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 弓部大動脈, 動脈硬化, 高齢者, 弓部大動脈再建術
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