アブストラクト(43巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 弁形成術(Rasping法)の中期遠隔成績
Subtitle :
Authors : 野地智, 北村信夫, 山口明満, 三木太一, 春藤啓介, 木村俊一, 康徳光, 入江寛
Authors(kana) :
Organization : 国立大阪病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 43
Number : 6
Page : 797-803
Year/Month : 1995 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 中等度以下のリウマチ性弁膜病変に対する電動ヤスリを用いた大動脈弁形成術(A-Rasping)及び僧帽弁形成術(M-Rasping)の術後遠隔期成績を検討した. 1986年4月から1994年6月までに当科においてA-Raspingを施行した14例及びM-Raspingを施行した6例, 計20例を対象とした. 術後追跡期間はA-Raspingで14ヵ月から102ヵ月, M-Raspingで6ヵ月から30ヵ月であり, 心臓超音波検査を用いて大動脈弁逆流度, 大動脈血圧較差, 僧帽弁圧較差及び心機能評価を行った. 統計処理は危険率5%をもって有意差ありとした. A-Rasping群14例の平均年齢は52歳で男性8例, 女性6例であった. 僧帽弁を主病変とした連合弁膜症が11例, 虚血性心疾患が3例であった. 大動脈弁疾患の内訳は, 狭窄症が4例, 閉鎖不全症が10例であった. M-Rasping群6例の平均年齢は57歳で男性1例, 女性5例であり, 全例僧帽弁狭窄症であった. このうち, 左房内血栓を伴った心房細動を2例に認めた. 20例全体の手術及び早期死亡はなく, 遠隔期死亡はA-Rasping群の2例に認めたがいずれも僧帽弁位の人工弁感染によるものであった. 大動脈弁逆流度:術後1年では全例I度以下の逆流に改善した. 術後3年で8例中2例(25%)にII度の逆流を認めたが術前より増強したものはなかった. 術後5年以降経過した4例もI度以下の逆流に留まっている. 大動脈弁圧較差:狭窄症を呈した4例の術前と術後の比較検討では, 各々29.5±7.6mmHg, 12.5±5.0mmHgであり, 術後に有意な減少を認めた(p=0.002). また術後4年で8例中1例(12.5%)に術前認めなかった13mmHgの圧較差を生じたが現在臨床症状は認めていない. 僧帽弁圧較差:術前及び術後の値は各々14.4±8.3mmHg, 4.7±1.6mmHgであり, 術後に有意な減少を認めた(p=0.011). 心機能評価:術前と術後の比較検討では, 両群ともに術前と比べ心収縮能の有意な改善を認めた. 本法は弁尖から弁葉中腹の肥厚を両面から安全且つ均一に除去できる利点を有しており, 自己弁温存を図る形成術式として有用であると思われた. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:797-803)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁形成術, 僧帽弁形成術, 遺残弁逆流, 弁再狭窄, 術後遠隔成績
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