Abstract : |
心室内伝導系に障害を与えることなく且つ確実に房室ブロックを作成するcryoablation法を基礎実験により工夫し, その臨床例における遠隔成績を検討した. 基礎実験ではまず雑種成犬5頭において体外循環下に最大His束電位記録部位(以下His最大部位)から10mm(以下10mm部位), 続いて5mm(以下5mm部位)冠静脈洞寄りの心房中隔にてcryoablationを行った. この結果10mm部位では完全房室ブロック作成は5例中1例なのに対し5mm部位では全例作成され且つQRS形態, HV時間への影響はなかった. 病理組織学的には5mm部位では房室結節からHis束貫通部に凝固壊死及び出血性壊死を認め且つその変化はHis束分岐部では軽度であった. 一方, 10mm部位では房室結節が完全に破壊されることはなく, またHis最大部位でのablationではHis束分岐部まで高度に破壊されていた. 次に雑種成犬10頭において5mm部位のみでcryoablationを行ったところ全例で完全房室ブロックとなり且つQRS形態, HV時間に有意な変化はなかった. 臨床例では9例に対して5mm部位のみでcryoablationを行い全例に完全房室ブロックが作成された. ブロック作成後は全例DDDペースメーカーを植え込んだ. 術後遠隔期では全例完全房室ブロックを維持し, 自己補充調律のR-R間隔は1,500から1,600msに安定していた. 遠隔期電気生理学的検査では全例がA-HブロックでありHV時間の延長を認めた症例はなかった. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:956-965) |