Abstract : |
虚血性心疾患のバイパス手術例に対する心筋保護法として, ヘマトクリット(Ht)15%以上のBlood Cardioplegia(B-C)の至適温度を明らかにするため, 対象128例をGroup I(8℃B-C)64例, Group II(20℃B-C)64例にわけて酵素学的心機能面より検討した. 酵素学的にはpeak CK(Creatine Kinase)はGroup I:1,881±1,253, Group II:1,466±840IU/L(p<0.05), peak CK-MBはGroup I:79±79, Group II:37±26IU/L(p<0.01)とGroup IIが有意に低値を示した. 術後心機能指標の検討は, RI心プール法で行った. 左室駆出率42%以下左室拡張末期圧12mmHg以上の低左心機能例Group I17例, Group II18例について比較すると, Group Iでは術後左室駆出率, 最大駆出速度(PER), 拡張早期最大充満速度は術前と比べ有意の改善を認めなかったのに対し, Group IIではこれらの諸指標に有意の改善を認めた(Group IIのPER:術前160±38, 術後243±91%EDV/sec, p<0.01). すなわちHt15%以上のB-Cを施行する場合には, 血液粘度と温度の点などから20℃のB-Cが8℃B-Cより良好な心筋保護効果が得られた. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:990-996) |