Abstract : |
急性下壁梗塞に合併した心室中隔穿孔(VSP)・僧帽弁閉鎖不全症(MR)を発症した2症例に対し, VSPのパッチ閉鎖とKay-Suzuki法による僧帽弁弁輪縫縮術(MAP)を行い良好な結果を得た. 両症例ともVSPは後中隔にみられ, MRは中等度であった. 症例1:74歳, 男性. 保存的治療により血行動態の安定をはかり, 梗塞発症後4週目に右室切開下VSP閉鎖, 経心房中隔アプローチでMAP, 左前下行枝へのA-Cバイパス術を施行した. 当症例ではドップラー心エコーによるVSPとMRの評価が有用であった. 症例2:69歳, 男性. 全身状態悪化により梗塞発症6日目に左右心室切開下, 経左室的にVSP閉鎖, MAPを行った. 両症例とも術後長期呼吸管理を要したが, 遺残短絡はなくMRも消失した. 梗塞後VSP, MRに対する同時手術に成功した症例は文献上まれである. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1028-1033)急性心筋梗塞(AMI)に合併した心室中隔穿孔(VSP)や, 僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する外科治療に関しては数多くの報告がみられ, 治療方針, 手術々式はほぼ確立されてきた. |