アブストラクト(43巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 解糖系促進によるフルクトース2リン酸の心筋保護効果
Subtitle :
Authors : 竹内功*, 高嶋一敏**, 鈴木宗平**, 福井康三**, Pedro J del Nido*
Authors(kana) :
Organization : *ピッツバーグ大学胸部心臓外科, **弘前大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 43
Number : 8
Page : 1126-1131
Year/Month : 1995 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 解糖系の中間代謝産物であるfructose 1, 6 diphosphate(FDP)はうっ血性心不全などの治療に既に用いられている. FDPは実験的に解糖系の働きを改善することが報告されているが, それは薬理作用によるのか, あるいは解糖系の基質として作用しているのかいまだ不明である. そこで今回われわれは家兎心を用い, まず初めに異なるFDP量が投与された場合の, 心収縮力とエネルギー代謝の関係について, 主に31P-NMRを用いて検討した. 次に, 2-deoxy glucose(2-DG)により解糖系を抑制した状態でFDP(10mM)を投与し, その効果について検討した. FDP投与により容量に依存してエネルギー産生並びに無機リンが増大した. FDP投与中に心機能は低下したが, 投与終了後前値に復した. 細胞内Mg2+が低下したが, これは解糖系の促進によるMg2+の利用と, 筋小胞体でのCa2+チャンネルの働きと関連していると考えられる. また2-DGを投与された場合心機能, エネルギー産生は低下し投与終了後も回復が見られなかった. しかし, FDPを投与した場合細胞内の高エネルギーリン酸は良く保たれ, 投与終了後の心機能回復及びエネルギー状態も良好であった. 以上のことからFDPは細胞内に入り解糖系を促進し, 基質として使われていると考えられた. 開心術などの虚血再灌流時には心筋細胞のエネルギー産生は解糖系に強く依存しており, 解糖系の促進は極めて有用であり, FDPの開心術時の利用の可能性が示唆された. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1126-1131)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : FDP, 心筋保護, 解糖系促進効果, Ca2+chelation, 2-deoxy glucose
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