Authors : |
長谷川順一, 北村惣一郎, 河内寛治, 川田哲嗣, 庭屋和夫, 亀田陽一, 水口一三, 小林修一, 吉田佳嗣 |
Abstract : |
同種大動脈弁(allograft valve)の弁機能を明らかにするために大動脈弁位におけるBicer弁及びSt.Jude Medical弁と比較検討した. 術後, 心臓カテーテル検査を施行し, Brockenbrough法を用いて安静時及び運動負荷時の圧較差, 血行動態を測定した. 同種大動脈弁(A群)14例, Bicer弁(B群)17例, St.Jude Mecical弁(S群)6例の計37例を対象とした. 平均圧較差は弁サイズ21mmで安静時及び運動負荷時ともA群でB群, S群より有意に低かった(安静時:A群平均0±0mmHg, B群平均8.0±3.5mmHg, S群平均5.0±1.4mmHg, 運動負荷時:A群平均0±0mmHg, B群平均11.0±4.9mmHg, S群平均10.0±2.8mmHg;p<0.05). 弁サイズ23mmでは安静時には3群間で有意差はなかったが, 運動負荷時にはA群でB群, S群より有意に低かった(A群平均0±0mmHg, B群平均8.4±9.3mmHg, S群平均5.5±4.4mmHg;p<0.05). A群の1例に19mmの同種弁を使用したが安静時に圧較差を認めず, 運動負荷時に8mmHgの圧較差を認めただけであった. 体表面積と安静時及び運動負荷時の弁圧較差の間には3群とも有意な相関は認めなかった. しかし, A群ではB群, S群に比べ1.20~1.80m2のすべての体表面積に対し, 一定して低い圧較差をとることが認められた. 左室駆出率, 左室拡張末期容量係数, 左室収縮末期容量係数, 安静時及び運動負荷時の心拍数, 心係数, 左室拡張末期圧には3群間に有意差はなかった. 同種大動脈弁は, 小さい弁サイズ及び運動負荷時に優れた弁機能を示し, 血行動態的には理想的な代用弁であると考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1132-1137) |