Abstract : |
当教室では解離性大動脈瘤に対してはentry部の人工血管置換を行ってきたが, その中でも腎動脈に障害が及んでいるような症例に対しては積極的に自家腎移植を行ってきたので, その有用性について検討する. 対象は1991年1月から1994年7月までに当教室で解離性大動脈瘤に対し手術を行った25例のうち自家腎移植を行った4例で, いずれもDeBakey IIIb型である. このうち3例は一期的に自家腎移植とentry部を包む遠位弓部及び下行大動脈人工血管置換術を行い, 1例は人工血管置換術のみ行った後に腎不全となり3週間後に自家腎移植を行った. 一期的に手術を行ったいずれの症例も術後の腎機能は術直後から良好で, また二期的に手術を行った症例も移植後2週間で透析離脱となった. 術後の腎シンチでは腎機能は改善しむしろ肥大傾向を認めるものが多かった. また術後のCTでも解離腔は著明に縮小し血栓形成も良好であった. 広汎型解離性大動脈瘤に対する手術方針に関しては, いまだ各施設で論議のあるところであるが胸腹部大動脈全置換は対麻痺の危険性や手術侵襲の大きさなどから安易には選択でき得ない術式である. Entry閉鎖あるいは同部の人工血管置換のみでは腎血流を維持できない可能性のある症例に対しては, 自家腎移植は手技も容易で腎庇護も確実であり, 腎血流再建において有効な方法であると考えられる. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1553-1558) |