Abstract : |
悪性腫瘍を合併した開心術症例12例について検討した. 開心術時の年齢は51歳から79歳(平均64歳)であった. 開心術は冠状動脈バイパス術が10例, 僧帽弁置換術が2例であり, 悪性腫瘍は胃癌4例, 大腸癌3例, 肺癌3例, 食道癌1例, 口唇癌1例であった. 悪性腫瘍手術先行症例が4例, 開心術先行症例が7例, 同時手術症例が1例であった. 悪性腫瘍手術先行例において, 腫瘍手術から開心術までの期間は3年から11年であった. これらは悪性腫瘍診断時に心疾患を発症していなかった. 悪性腫瘍手術先行例は, 開心術後7ヵ月から2年3ヵ月が経過しており, 腫瘍再発を認めていない. 開心術先行例では, 悪性腫瘍手術までの期間は3日から74日であった. 開心術先行例は1例を2年1ヵ月後に胃癌再発で失った他は, 追跡期間4ヵ月から1年8ヵ月を経過して再発兆候なく生存している. われわれは悪性腫瘍を合併した場合の開心術に関して次のように対処している. (1)開心術は生命予後1年以上を期待できる症例に対して行う. (2)開心術を悪性腫瘍手術より先行させる. (3)開心術後, 体力が回復し次第, 悪性腫瘍に対する手術を行う. (4)悪性腫瘍に対する補助療法は行わない. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1565-1568) |