Abstract : |
心保存中にリアルタイム且つ無侵襲に心筋viabilityを評価する方法はない. 今回雑種成犬の摘出心を用い, 保存液に4℃生理食塩水, UW液を用い単純浸漬保存を行い, 保存中の心筋抵抗率, 心筋内ATP含有量, 水分含有率を測定した. 更に単純浸漬保存後に頸部異所性移植を行い, 再灌流後の左室Emaxを測定することにより, 保存中の心筋抵抗率の経時変化から保存時間限界を予測しうるかいなかを検討した. 保存中の心筋抵抗率は, 生理食塩水保存群, UW液保存群においてそれぞれ5.5時間, 13時間まで有意に上昇し, それぞれ心筋内ATP含量はその時間までは虚血前値の50%以上を維持していた. 心筋内ATP含有量が50%に達する時点の心筋抵抗率の平均上昇率は両群とも0.1Ωcm/minであった. 保存中の水分含有率は, 生理食塩水保存群では心筋抵抗率の上昇と共に上昇したが, UW保存群では心筋抵抗率の上昇にかかわらず上昇せず, 心筋抵抗率の変化は水分含有率の変化に相関しなかった. 生食4時間保存心, UW液12時間保存心において, 心筋内ATP含有量は虚血前値の50%以上を維持し, 移植再灌流後の左室Emaxは虚血前値の90%以上を示しviabilityは良好であった. リアルタイムに測定可能な心筋抵抗率の平均上昇率を測定することにより, 保存中に単純浸積保存の保存時間限界を予測できる可能性が示唆された. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1579-1586) |