Abstract : |
肺動脈絞扼術(PAB)後のFontan型手術はPAB施行の時期, 程度, その後の姑息手術, 術前評価, 術式, 術後管理など未だ議論の多い手術である. 1992年までに当施設ではPAB後のFontan型手術を13例施行した. これらの症例のPAB施行時の年齢, その程度, Fontan型手術施行までの各種姑息手術, Fontan型手術直前及び術中評価, 術式, 及びその成績について検討した. 症例は三尖弁閉鎖症6例, 左室性単心室2例, 右室性単心室4例, Criss-Cross心1例であった. われわれは幅3mmのTeflonテープを用いてPABを施行しているのでTruslerの基準より周径で2mm強めのbandingとなっている. PABは生後2.5ヵ月時に施行しその程度は平均肺動脈圧で平均43.5mmHgから18.8mmHgへ, 肺動脈周囲径で平均53.5mmから26.0mmまで, Truslerの4mm幅のテープを用いた基準式(24+体重Kg)に基く周径値より約2mmきつめに施行した結果となった. その後必要ならばsystemic-pulmonary shuntを含めた多段階手術を施行し適正な動脈酸素分圧及び肺血管床の状態を維持した. Fontan型手術は平均5.9歳時に施行した. 手術術式は右心耳-肺動脈直接吻合, 心房内partitionを基本術式として施行した. 手術成績は早期死亡1例, 遠隔死亡2例を認めたが他の全例を現在も経過観察中である. 非生存群では生存群と比較して肺高血圧, 高肺血流, 高肺血管抵抗の傾向を示した. また通常のFontan型手術の適応を逸脱した高肺血管抵抗症例(4 wood Units以上)の三尖弁閉鎖症3例に対して自己弁を三尖弁位に移植し右室を利用した新しい解剖学的根治術を導入した. 結論としてFontan型手術を前提とした高肺血流量, 肺高血圧を示す三尖弁閉鎖症や複雑心奇形に対する第一期手術としては乳児期早期に強めのPABを施行すべきで, その後の肺血流コントロールは各種姑息手術を段階的に施行することが望ましい. また著しい高肺血管抵抗を示す三尖弁閉鎖症に対しては右室を利用した新しい解剖学的根治術は有用な術式であると考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1995, 43:1631-1638) |