アブストラクト(43巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 顆粒球エラスターゼより見た体外循環時の手術侵襲
Subtitle :
Authors : 古永晃彦, 壷井英敏, 岡田治彦, 郷良秀典, 浜野公一, 杉和郎, 加藤智栄, 藤村嘉彦, 江里健輔
Authors(kana) :
Organization : 山口大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 43
Number : 10
Page : 1716-1719
Year/Month : 1995 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環の生体侵襲を検討するため, 待機的に行われた心臓外科手術24例で顆粒球エラスターゼ(GEL)を測定した. 対照として消化器外科手術47例においてもGELを測定した. GELは術前, 第1病日, 第3病日, 第6病日に測定された. 心臓外科手術症例では, インターロイキン8(IL-8)が術前, 体外循環終了時, 第1病日, 第3病日, 第6病日に測定された. 消化器外科手術例を, 術後合併症を起こした15例(GC群)と非合併例32例(GU群)とに分けた. 心臓外科手術例は, 体外循環時間120分以内の5例(HL群)と体外循環時間120分以上19例(HH群)に分けた. 結果:GC群の3例が多重臓器不全(以下MOF)となり内2例が死亡した. しかし, 他の3群に死亡例はなかった. GEL(μg/L)の変動は, 各群ともに第1病日には上昇したが以後低下した. GU群, HL群は術前より第3病日まで高値をとったが第6病日には127.3±41.8, 134.8±18.0と正常範囲内に低下した. しかし, GC群, HH群は第6病日においても229.9±186.4, 214.0±133.1とGU群に比べ有意に高値となった(p<0.05). また, 第6病日においてHH群はHL群より有意に高値であった(p<0.05). 一方, IL-8(pg/ml)はHL群, HH群, 各々術前1.8±1.2, 3.3±1.7, 体外循環終了時8.6±8.6, 44.3±37.1, 第1病日2.5±1.1, 8.3±12.6, 第3病日1.8±0.6, 3.3±2.2, 第6病日3.4±2.0, 6.0±4.7であった. IL-8はHL群に比べHH群で体外循環終了時に有意に高く, 他の時点でも高い傾向にあった(各々p<0.001, p<0.1). HH群のGELは, 第6病日においても高くMOFの準備状態であった. また, GEL高値の原因は, 体外循環終了時のIL-8が高値のためと考えられた. 従って, 長時間の体外循環症例では, 抗サイトカイン療法やUlinastatinの積極的投与と注意深い管理が合併症予防に重要である. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1716-1719)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, 手術侵襲, 術後合併症, 顆粒球エラスターゼ, インターロイキン8
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