Abstract : |
症例は86歳, 男性. 下壁の急性心筋梗塞発症後に収縮期心雑音が出現し, 心カラードップラー検査で心室中隔穿孔と診断された. 入院時のQp/Qsは2.1であった. 心筋梗塞発症11日目に心不全が増強したためIABPを挿入し緊急手術を行った. 穿孔部は心基部よりの心室中隔にあり, 可及的に梗塞巣を切除すると僧帽弁輪から乳頭筋付着部に及ぶ大きな欠損となった. Daggettらの方法に基づき心室中隔欠損部をテフロンフェルトで閉鎖し, また人工血管で作成したパッチで左室自由壁欠損部を閉鎖した. 術後に一過性の腎不全に陥ったものの以後は良好に回復し退院した. 最近高齢者の心室中隔穿孔手術における成功例の報告が散見されるようになったが, 80歳以上の症例でDaggettらの方法による後中隔穿孔に対する手術成功例の報告はなく, 本症例は調べえた限りでは本邦最高齢と考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1774-1777)急性心筋梗塞に合併する心室中隔穿孔(ventricular septal perforation, 以下VSP)に対する手術成績は近年向上してきているが, いまだ満足すべきものではない. |