Abstract : |
片肺移植後の早期にはreimplantation responseと呼ばれる一過性の肺水腫が出現する. この病態が対側肺にどのような影響を及ぼすのか, 肺循環動態の変化から検討した. 雑種成犬20頭を以下の3群に分け研究した. 第I群;左肺同種移植群で術後の免疫抑制剤は使用しなかった. 第II群;donor肺摘出中にdonor犬にPGI2(1μg/kg/min)を30分間かけて点滴投与した. 再灌流1分前にSOD(20mg/kg)をrecipient犬に投与した. 更に, 第III群;II群に加え移植2日前からcyclosporine(20mg/kg), azathioprine(4mg/kg)を投与した群である. 上行大動脈, 左肺動脈にDoppler血流計を装着し, 更に肺動脈圧を術後14日間測定した. 結果:I群では移植後3日目, 7日目に肺動脈圧及び右肺動脈の血管抵抗が増大しており, II群, III群に対して有意差が認められた. Reimplantation responseはこれまでgraft肺にみられる病態と考えられていたが, 本研究からnative肺(recipient肺)にも影響を及ぼす事実が明白となった. また, PGI2, SODを投与し温阻血・再灌流障害を軽減することによってgraft肺並びにnative肺における血管抵抗の上昇をも抑制することができ, 明らかに病態の改善が確認できた. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1821-1827) |