Abstract : |
心筋虚血中は細胞内水素イオン(H+)とlactateの蓄積によりイオン分布の不均衡を生じる. 虚血中に生じるこれら代謝産物の蓄積を抑えるために心筋保存は超低温が概念的中心となる. 今回われわれは塩基性アミノ酸であるhistidineの緩衝作用を利用し, H+とlactateを細胞内から除去し, 嫌気性解糖を促進させることにより長時間の心保存の可能性について検討を行った. UW液(UW-24), histidine液(HB-24)で24時間保存した群, histidine液で30時間保存した群(HB-30)の3群間で心機能を比較検討した. 心機能は血液充填した灌流液による持続灌流装置を用い, 虚血保存─再灌流2時間後に左室内に挿入したバルーンにより圧─容量曲線を求め, endsystolic elastance(Ees), equilibrium volume(VO), 拡張終期容量(Ved), 収縮末期容量(Ves), stroke volume(SV), ejection fraction(EF)を算出した. 各パラメーターに関してHB-24, HB-30がUW-24より有意に良好な心機能回復を示した. また, HB-30の再灌流2時間後の心機能回復はHB-24に比べ不良であったが, 低濃度あるいは高濃度のドブタミン負荷により有意に心機能が改善した. このことは24時間以上の心筋保存の可能性を示している. histidine液により細胞内に蓄積したH+及びlactateを緩衝することにより, 唯一の嫌気下エネルギー産生系である解糖系の活動の抑制を解除し, 更に解糖系を促進させてエネルギー供給を可能とし, 良好な心機能回復をもたらすと考えられる. この保存液により長時間心保存が可能であると考えられた. |