アブストラクト(43巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 脳組織酸素飽和度の変動からみた逆行性及び選択的脳灌流法の比較検討 -spectroscopy instrument(Invos 3100)による評価-
Subtitle : 原著
Authors : 樋上哲哉, 小澤修一, 麻田達郎, 向原伸彦, 大保英文, 顔邦男, 岩橋和彦, 小川恭一*
Authors(kana) :
Organization : 兵庫県立姫路循環器病センター心臓血管外科, *兵庫県立こども病院
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 43
Number : 12
Page : 1919-1923
Year/Month : 1995 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部大動脈瘤手術における脳保護手段としての逆行性脳灌流法(RCP)と選択的脳灌流法(SCP)の脳保護効果につき臨床的に検討した. 対象はそれぞれ7例で, 脳保護の指標として近赤外線分光法による脳組織酸素飽和度測定装置(Invos 3100)による脳組織酸素飽和度(rSO2)を用い, 脳灌流中の経時変化を比較した. 体外循環開始直前のrSO2値(コントロール値)はRCP 65.9±6.2%(mean±SD), SCP64.9±4.7%で差はなく, 両群とも体外循環による中心冷却に伴ってrSO2は漸増し, 脳保護開始直前にはそれぞれ80.3±8.1%, 79.9±6.5%に達した. 一時的循環遮断によりrSO2は急激に低下したが, SCPでは脳灌流開始によりまもなく脳保護開始前値に復するのに対し, RCPでは時間経過と共にほぼ一定の割合で低下し続け, 脳保護開始後約35分でコントロール値を下回ることが判明した. 脳保護時間はRCP38.9±9.7分, SCP80.7±45.1分であり対象症例の違いからRCPで有意に短かったが, 脳保護終了時のrSO2はRCP63.4±10.2, SCP75.6±6.8%, 脳保護開始時から終了時までの減少率はそれぞれ21.1%, 5.4%であり, いずれもRCPで有意な脳酸素化環境の悪化を示した. 臨床的には両群の全例で神経学的異常を認めず翌日までに遅延なく覚醒した. 以上よりSCPでは臨床使用範囲内でその時間的制限はないことが示されたが, RCPではrSO2は時間と共に低下し続け, 35分以上でコントロール値を下回り要注意領域に入ると考えられた. 今後, rSO2と脳虚血の可逆性との関係からその下限値が確定すれば, 本モニターの示すrSO2は術中脳保護の安全性を示す上での有用な指標となると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 脳組織酸素飽和度, 逆行性脳灌流法, 選択的脳灌流法, 弓部大動脈瘤, 脳保護
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