Abstract : |
僧帽弁膜症における肺血管病変の病理組織学的変化と運動負荷時の肺循環動態の変動との関係について, 16例の開心術症例を対象に手術前後で検討した. 術中肺生検で右中葉から得た肺小動脈の中膜厚比は13.8±3.2%, 内腔狭窄度は37.3±13.5%であった. 疾患別では僧帽弁狭窄症(MS)群10例, 僧帽弁閉鎖不全症(MR)群4例, 僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症(MSR)群2例で中膜厚比, 内腔狭窄度に有意差はなかった. 中膜厚比と内腔狭窄度には有意の相関関係を認めた(r=0.06, p<0.05). 肺小静脈の壁厚比は8.21±1.8%であった. 自転車エルゴメーターを用いた運動負荷時の平均肺動脈圧は術前45.9±9.4mmHgから術後38.1±11.3mmHgへと有意に下降したが, MR群3例, MS群1例の4例では術前に比べ術後に上昇した. 運動負荷時の肺血管抵抗は術前(2.74±1.9U・M2)と術後(2.69±1.3U・M2)で変化は認めなかった. 中膜厚比は術前安静時の平均肺動脈圧とのみ有意の相関関係を認めた(r=0.57, p<0.05). 術後の運動負荷時に肺動脈圧が上昇した群では中膜厚比が平均16.2%, 内腔狭窄度は平均47.4%であり, 肺動脈圧が下降した群より中膜厚比, 内腔狭窄度ともに有意に高く(p<0.05), 肺血管病変も進行していた. 以上の結果から, 中膜厚比15%以上, 内腔狭窄度40%以上では, 術後に運動負荷時の肺循環動態が改善しない場合が多く, 不可逆的な肺血管病変のためと考えられた. |