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症例は66歳, 男性. IgAκ型多発性骨髄腫(Durie ＆ Salmon分類の病期IIIA)と, 左B10a原発肺扁平上皮癌(c-T2N0M0 stage I)の重複癌であった. 出血凝固機能では, 血小板数11.7×104/mm3, 出血時間2分と血小板機能はほぼ正常域であったが, PT 13.1秒(78％), APTT 45.1秒, ATIII 65％と凝固系の機能低下を認めた. またM蛋白が6,551mg/dlと高値であり, 高粘稠度症候群も含め出血傾向が予想された. 術前に800mlの血漿交換療法を行ったところ, PT 12.6秒(82％), APTT 31.3秒, ATIII 75％と改善し, M蛋白も4,696mg/dlと減少した. 左下葉切除術＋R1リンパ節郭清を施行したが, 術後出血により再開胸を余儀なくされた. 出血は強固な胸膜癒着の剥離が主因で, 骨髄腫による出血傾向も関与したと考えられた.多発性骨髄腫合併例の手術では出血傾向の是正は必要で, 術前の血漿交換療法は検討すべきであり, その適応と交換後の基準値の設定は, 今後の検討課題と思われる. (日本胸部外科学会雑誌1995；43：1967-1971) |
