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3例の重症AAEを有する広範囲胸部大動脈瘤症例に対して一期的にBentall変法手術兼上行－弓部－下行胸部大動脈中央部までの人工血管置換術を行った. 年齢は34, 34, 42歳, 男性2例, 女性1例で, いずれもAAEを有し, 病型は2例がMarfan症候群に伴う解離性大動脈瘤（I型, II＋IIIb型）, 他の1例が真性上行弓部下行胸部大動脈瘤であった. 手術は始めにF-Fバイパスによる部分体外循環下に下行胸部大動脈中央部にて, 予め作製しておいた3分枝付き大動脈グラフトと遠位側吻合を行った. 続いて, 順次中枢側へ弓部分枝再建を行っていくが, 可及的に心停止時間を短縮させる目的で左鎖骨下動脈再建後の左総頸動脈再建は常温脳灌流を用いて行った. この段階で直腸温20℃を目標にcore coolingを開始し, 冷却過程で心停止を得て, 右腋窩動脈よりの低体温脳灌流下に腕頭動脈再建を行った. また選択的脳灌流時間も短縮する目的で各弓部分枝再建後は遮断を分枝中枢側に順次移動してグラフトよりの送血としていった. 大動脈基部再建をBentall変法術にて行い両グラフトを吻合し手術を終了した. 3例の全体外循環時間は194～213分, 平均206分であるが, 心停止時間は75～89分, 平均84分, 脳灌流時間は左総頸動脈9～16分, 平均13分, 腕頭動脈9～15分, 平均12分と著明に短縮された. 以上より, 手術侵襲を軽減する目的で心拍動下部分体外循環に左総頸動脈に対して常温脳灌流を併用して心停止時間及び選択的脳灌流時間を短縮させ良好な結果をえた. （日本胸部外科学会雑誌1996；44：19－24） |
