| Authors ： |
諸久永, 岡崎裕史, 大関一, 曽川正和, 羽賀学, 斎藤憲, 林純一, 宮村治男, 江口昭治 |
| Abstract ： |
選択的脳灌流時の高灌流に伴う脳障害の発生機序を解明するために, ポリカーボネート製ハードシェルリザーバーを頭蓋骨, 三重構造のバッグを脳に見立てたモック回路を作成し, 圧－流量関係を検討した. 各バッグは小孔で交通させ, 最内側バッグは送血路と, 最外側バッグを脱血路と連結させた. 回路内に水を満たし, リザーバーレベルを上下させて, 頭蓋内圧（＝ハードシェル内圧, 以下ICP）, 頭蓋内動脈圧（最内層バッグ内圧）, 頭蓋内静脈圧（最外層バッグ内圧）が, いずれも0mmHgとなった時点をICP＝0mmHgとした. また, ICP亢進状態（ICP＝10mmHg）, 及び脱血側灌流障害を作成し測定を行った. ICP＝0時のポンプ灌流量（PF）と頭蓋内灌流量（CAF）, 頭蓋外灌流量（EXCAF）, 脱血側灌流量（IJVF）とは, 有意の正相関を認め, PFと頭蓋内動静脈圧, 頭蓋外灌流圧（EX-CAP）, ICPには, 有意の正相関を認めた. ICP亢進時は, ICP＝0時と同様の変動を認めたが, CAF-IJVFから算出したバッグ容量変動とPF, ICP, 及び頭蓋内静脈圧との間に, 有意の負相関を認めた. 同一流量下では, EX-CAF, IJVFはICP亢進群が0mmHg時に比し, 高値傾向を, CAFは低値傾向を示した. 一方, 頭蓋内動静脈圧は, いずれの流量時にもICP亢進群が有意に高値を示した. 一方, 脱血側灌流障害モデルでは, CAFは高値を, 頭蓋内動静脈圧, EXCAP, ICPは, 高値を示した. 以上から, 高流量灌流により, 頭蓋内圧の著明な増加と頭蓋外へのシャント血流の増加, 更に脳内血流容量及び脳血流量の減少が生じることが推測された. また, 高度狭窄を伴う脱血側灌流障害時には, ICP＝0mmHgの高流量時と同様の灌流状態となったことから, 選択的脳灌流時には, 静脈灌流障害が生じないよう留意することが肝要である. （日本胸部外科学会雑誌1996；44：38－46） |
