Abstract : |
症例は67歳, 女性. Stanford B型血栓閉鎖型大動脈解離発症後約3年半で, 下行大動脈最大径が60mmとなり, また, 冠状動脈造影上, 回旋枝No.13に90%狭窄を認めたため同時手術を施行した. 直腸温22.6℃, 鼓膜温14.9℃で左開胸下に下行大動脈下部をクランプし下半身を灌流, この還流血により右房圧を上昇させることで逆行性脳灌流を行い, 下行大動脈人工血管置換を行った. 冠状動脈バイパスは, 遠位側吻合を最初の全身冷却中に施行し, 中枢吻合は体外循環離脱後置換した人工血管に吻合した. 逆行性脳灌流時間は27分, 体外循環時間は167分であった. この方法は, 胸部大動脈及び冠状動脈の双方にapproachが可能で, 良好な脳保護効果も得られる有効な方法であると考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1996;44:74-77) 症例 症例:67歳, 女性. 主訴:胸部異常陰影. 現病歴:生来健康であったが, 1990年10月16日, Stanford B(DeBakey IIIb)型の血栓閉鎖型大動脈解離を発症した. 以後, 外来follow-upを受けていたが下行大動脈径が拡大してきたため今回手術目的で入院となった. |