Abstract : |
症例は19歳, 男性. 嚢胞性前縦隔腫瘍の診断にて, 腫瘍を含む胸腺亜全摘を施行した. 腫瘍は胸腺内にあり, 9×8×5cm大で, 割面は嚢胞性・海綿状で, その中に充実性部分を認めた. 病理学的にまれな胸腺原発のmucoepidermoid carcinomaであった. 術後放射線療法を施行し, 術後3年の現在再発なく生存中である. 胸腺原発のmucoepidermoid carcinomaは, われわれが調べ得た限りでは現在までに本邦では7例の報告があるにすぎず, まれな疾患と思われるので, 文献的考察を加え報告する. (日本胸部外科学会雑誌1996;44:100-102) Mucoepidermoid carcinomaは, 唾液腺腫瘍1)2)として広く知られており, 呼吸器外科領域では気管支発生3)4)のものがしばしばみられる. 胸腺原発のmucoepidermoid carcinomaは, まれでありわれわれが調べ得た限りでは現在までに本邦では7例の報告5)~11)があるにすぎない. 今回, 嚢胞性前縦隔腫瘍の診断にて手術を施行した結果, 胸腺原発のmucoepidermoid carcinomaと診断された1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する. |