アブストラクト(44巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 不安定狭心症に対する冠状動脈バイパス術におけるterminal warm blood cardioplegiaの意義
Subtitle :
Authors : 大谷肇, 川崎寛, 二宮英樹, 木戸正訓, 川口英樹, 大迫茂登彦, 加戸靖, 熊本隆之, 田中一穂, 今村洋二
Authors(kana) :
Organization : 関西医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 2
Page : 123-129
Year/Month : 1996 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 不安定狭心症(UAP)に対する冠状動脈バイパス術(CABG)における心筋保護法としてterminal warm blood cardioplegia(hot shot)の有効性を検討した. 対象は1991年1月から1994年12月までに順行性心筋保護法を用いてCABGを行った133例である. 心筋保護液の初回投与法は全例でmodified St.Thomas’Hospital液を大動脈基部から注入するcold crystalloid cardioplegiaであり, 1991年1月から1993年4月までの前期症例では2回目以後同液, 又はcold blood cardioplegia液を間歇的に大動脈基部と大伏在静脈グラフトから注入し, すべての末梢側吻合後に大動脈遮断を解除した. 1993年5月以後の後期症例では2回目以後の心筋保護法は間歇的cold blood cardioplegiaを行い, すべての末梢血吻合後大動脈遮断下にhot shotを施行した. 待期的にCABGを施行した安定狭心症(SAP)95例のうちhot shot非施行群は51例, hot shot施行群は44例であった. 緊急, 又は準緊急でCABGを施行したUAP38例のうちhot shot非施行群は17例, hot shot施行群は21例であった. 周術期心筋梗塞の発生頻度はSAP症例のhot shot非施行群では2例(5.9%), hot shot施行群では1例(2.3%)であったが, UAP症例のhot shot非施行群では6例(35%), hot shot施行群では1例(4.8%)とUAP症例のhot shot非施行群が他群と比較して有意に高率であった. 手術死亡はhot shotを施行しなかったSAPとUAPの各群1例に認めた. 術後のmax.CK‐MB(IU/L)はSAP症例ではhot shot非施行群が65±4, hot shot施行群が57±7と有意差を認めなかったが, UAP症例ではhot shot非施行群が134±26, hot shot施行群が57±8とhot shot施行群で有意に低値であった. 術後48時間以内に投与したdopamine及びdobutamineの総量(mg/kg)はSAP症例ではhot shot非施行群が13.9±0.9, hot shot施行群が13.9±0.9と差を認めなかったが, UAP症例ではhot shot非施行群が18.6±2.1, hot shot施行群が13.7±1.3とhot shot施行群で少ない傾向を示した. CABG直後の左室仕事係数(g・m/m2/b)はSAP症例ではhot shot非施行群が36±1.5, hot shot施行群が40±2.0と有意差を認めなかったが, UAP症例ではhot shot非施行群が29±2.2, hot shot施行群が39±2.3とhot shot施行群が有意に良好な左室機能を示した. 以上の成績からhot shotは, 特にUAP症例に対するCABGにおける心筋保護法として有用であることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠状動脈バイパス術, 不安定狭心症, terminal warm blood cardioplegia
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