アブストラクト(44巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 進行肺癌における主要組織適合抗原(MHC)の発現
Subtitle :
Authors : 平田哲, 久保良彦, 小久保拓, 北田正博, 野坂哲也, 八柳英治, 笹嶋唯博
Authors(kana) :
Organization : 旭川医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 2
Page : 138-143
Year/Month : 1996 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 進行肺癌における主要組織適合抗原の発現につき検討した. 教室で切除されたp‐stage IIIa肺癌症例43例を対象とした. 手術は肺葉切除術33例, 肺摘除術9例, 区域切除術1例であり縦隔郭清は全例施行した. HLA抗原の検討方法は腫瘍組織のparaffin bloc切片を用い免疫組織学的手法(SBA法)にて行った. 一次抗体として抗HLA class‐I抗体はw6/32(Sera Lab社)を用いた. 癌細胞核DNA量はフローサイトメトリー(FACScan)を用い測定した. 増殖期細胞の評価のためproliferating cell nuclear antigen(PCNA)をPC10(DAKO-PCNA)を用い検討した. 結果は進行肺癌43例におけるHLA classI抗原の発現は陽性17例(39.5%), 陰性26例(60.5%)であった. 組織型別では扁平上皮癌症例にHLA class I抗原陰性例が多くみられた. リンパ節転移のあった40例では29例(72.5%)がclassI陰性であった. HLA class I抗原の発現と予後の比較では, 5年生存では陽性例の42%に対し, 陰性例は4%であり, 有意にHLA class I抗原陽性例の予後が良好であった(p<0.01). 癌細胞核DNA量との組み合わせによる検討では, diploid症例ではHLA抗原の発現の有無に関し, 差はみられなかったが, aneuploid症例においてはHLA抗原陽性の症例の予後が有意差をもって良好であった(p<0.01). また, PCNA陽性症例ではHLA抗原の発現は予後に影響せず, PCNA陰性例ではHLA抗原の発現している例の予後が良好であった. 以上より進行肺癌においてHLA抗原とPCNAは肺癌の予後因子となり, 増殖期細胞の少ない症例においては, HLA抗原の発現が大きく予後に影響を与えていると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 進行肺癌, HLA抗原, 癌細胞核DNA量, PCNA
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