アブストラクト(44巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 予測術後肺機能からみたI期肺癌治癒切除例の評価と反省
Subtitle :
Authors : 小泉潔, 原口秀司, 田中茂夫, 松島伸治, 五味淵誠, 秋山博彦, 三上巌, 福島光弘, 見城正剛, 神野正明
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第2外科, 日本医科大学胸部・心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 2
Page : 162-168
Year/Month : 1996 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺癌取り扱い規約により1982年から1993年までに絶対的治癒切除が施行された病理病期I期の非小細胞肺癌140例について, 予測術後肺機能からみた生存率を検討し知見を得たので報告する1). 平均年齢は62歳(31~84歳), 男女比は103:37, 組織型別では, 腺癌75例(53%), 扁平上皮癌61例(44%), 大細胞癌4例(3%)であった. 予測術後肺機能値は, 予定術式による術前後での肺容積の変化率を算出し, これと術前値との積から求めた(小数点以下は四捨五入とした)2). 予測術後%VCと同%FEV1.0が56%以上(N群:正常群)とどちらかが55%以下(H群:障害群)の2群に分類した. N群の1年生存率, 5年生存率が, 各々98%, 72%であったのに対し, H群では各々86%, 45%とN群に対して有為差をもって不良であり, I期肺癌でありながらII期肺癌の生存率に相等していた. 更に, 年齢因子として70歳以上群と未満群についても検討した. N群では70歳以上群と未満群との間に有意差を認めず, 絶対的治癒切除で期待された生存率が得られていたが, H群の70歳以上群では1年生存率は80%, 5年生存率は17%と病理病期IIIA期肺癌と同等の生存率しか得られておらず, N群におけるそれと有意差をもって極めて不良な結果が得られていた. 術後の社会的活動能力(Performance Status=PS)は平均術後1年経過時の追跡調査の評価で, H群では術前に比し1~3度の低下が確認された. 70歳以上例では, 予測術後%VCと同%FEV1.0の両方あるいはどちらかが55%以下と予想された術後換気障害群は, 予後とQOLの維持に関して看過できない問題を有すると反省された. 以上から, これらの症例では肺容積温存と術後QOL低下予防とを目的とした縮小手術も考慮されるべきかと推察した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : I期非小細胞肺癌, 絶対的治癒切除術, 予測術後肺機能, 生存率, QOL
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