Abstract : |
1987年1月から1994年7月までに当教室で経験した急性解離性大動脈瘤は83例で, そのうち7例(8%)が下肢虚血症状を伴っていた. Stanford分類ではA型が4例, B型が3例であった. 術前血管造影を施行し得た症例は5例で, 腹部大動脈の閉塞が1例, 右総腸骨動脈の閉塞が3例, 右総腸骨動脈の高度狭窄が1例であった. Stanford A型解離性大動脈瘤では, 緊急に上行あるいは上行・弓部大動脈人工血管置換術を施行し, 下行大動脈にエントリーを有していた1例を腎不全・多臓器不全により失ったが, 他の3例は生存退院した. Stanford B型解離性大動脈瘤では, 2例に下肢救済のためのバイパス術を施行し, 1例を手術時期の遅れから失ったが, 1例は慢性期に移行した. また, 破裂例では緊急胸部下行大動脈人工血管置換術を施行し救命し得た. Stanford A型解離性大動脈瘤では緊急に人工血管置換術を先行施行すべきと考えるが, 人工心肺送血時の工夫, 術後のMNMS(myonephropathic metabolic syndrome)発生には十分留意する必要がある. また, Stanford B型解離性大動脈瘤では破裂や腹部臓器などの他部位の虚血がない場合は, 下肢救済のためのバイパス術を施行し, 内科的治療を継続することが可能であった. |