Abstract : |
肺動脈塞栓症に対して当センターで1982年より95年5月までの13年間に施行した直達的肺塞栓摘除術20例の手術成績を検討した. 年齢は25~72歳(平均46歳), 男/女は12/8であった. 肺塞栓を病態により急性血栓塞栓4例(I群), 慢性血栓塞栓12例(II群), 腫瘍塞栓4例(III群)の3群に分類した. I群の4例では2例はショック状態, 2例は高度の右心不全を呈していた. 緊急手術にて人工心肺を使用して血栓摘除を行い, 3例を救命した. II群の12例では術前の状態はNYHA II度1例, III度9例, IV度2例であり, 肺動脈収縮期圧は24~90mmHg(平均74mmHg)であった. 手術は開胸法を7例(右側4例, 左側3例)に行ったが, 血栓内膜摘除が不十分であった2例は心不全と呼吸不全のために手術死亡した. 2例では症状が改善して社会復帰可能となった. 症状が不変であった3例では, 退院はできたが2例は心不全のために遠隔死亡した. 正中到達法は5例に行ったが, 最近の4例では超低体温循環停止法を用いた. 2例は経過良好であったが, 3例は血栓内膜摘除が十分行えなかったことと, 術前状態が極めて不良であったため手術死亡した. III群の4例中1例は11ヵ月延命できたが, 他の3例は塞栓物がほとんど摘除できずに手術死亡した. 急性肺血栓塞栓症は早期診断と緊急手術で救命可能であった. 慢性肺血栓塞栓症では手術適応の選択と確実な血栓内膜摘除の施行が重要と思われた. |